アエラス フォーラム 関西から新しい「風」─斬新な思想、創造的な発想
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第12回 アエラスフォーラムII
「課題先進国日本の未来~東日本大震災復興とわたしたちのこれから」

コーディネーター
田村 拓

基調講演 I
田村太郎
基調講演 II
竹村真一

 
コーディネーターより
 今、日本は、閉塞感にとらわれています。これまで世界を席巻してきた日本を代表する企業が活力を失い、新しい道を見いだせずにいます。高い技術力やモノづくりの力など、世界に誇るべきものがありながら、その強みを国民自身が見失っているように思います。コンプライアンスやガバナンスを洗練する中で、日本の企業は、かえってそうした規制に縛られ、国際競争力を失っているという指摘もあります。
 また経済成長を知らずに育った今の若い世代は、日本経済新聞に掲載された「絶望の国の幸福な若者たち」という論説に象徴されるように、将来に希望を持てないが故に現状の生活に小さな満足感を感じながら生きています。
 明るい兆しの見えない状況下で、唯一気を吐いているのが、ベンチャー企業です。とりわけ30歳代から40歳代の若い起業家の活躍には目覚ましいものがあります。しかし、こうしたベンチャー企業の多くが、アジアマーケットを視野に入れ、いち早く日本を離れてシンガポールなどの海外へ拠点を移してしまい、国内の停滞感を打開する力にはなっていません。政治においても、あれほど国民からの期待を一身に受けた政権交代だったにもかかわらず、政治への期待や信頼は低下する一方です。
 そんな中で発生したのが、2011年3月の東日本大震災でした。震災直後、日本人は一瞬、強く結束したように見えました。国民全体が被災地の問題をわがことのように感じ、「みんなで一緒に復興しよう」という意志を表明したように思われました。しかしあれから1年、復興のスピードは、予想以上に遅々としています。「1000年に一度」とも言われた大災害ですから、復興が容易でないのは承知です。それでも日本は、第二次世界大戦後、焦土と化した国土からも力強く立ち上がってきました。そうした力を今一度取り戻すには、どうしたらいいのでしょうか。
 日本の抱える閉塞感は、先進国をはじめ、世界にも蔓延しつつあります。私たちはこのたびの震災から復興に挑む中で、世界が直面する課題の解決策を世界に示せるかもしれません。それに寄与するような斬新なアイデアが、今回のアエラスフォーラムⅡを通して生み出されることを期待しています。
田村 拓(SCSK株式会社)
フォーラムダイジェスト

■基調講演I 被災地の復興を通して日本の未来を考える~阪神・淡路と東日本大震災の現場から~

 基調講演Ⅰでは、一般財団法人ダイバーシティ研究所の代表理事を務める田村太郎氏から、東日本大震災後、被災地の復興に尽力されてきた経験をもとに、被災地のこれから、そして日本の未来について、示唆に富んだ話題が提供されました。
 17年前に起きた阪神・淡路大震災後、被災地で外国人を支援する活動を開始した田村氏。その後、在日外国人への情報提供サービスビジネスを立ち上げるとともに、数々のNPO法人の設立に関わり、社会活動に取り組んでこられました。一貫して関心を抱いてきたのは、外国人をはじめ、多様なちがいを持った人々が暮らしやすい社会の構築です。東日本大震災後の復興支援においても、その経験が存分に生かされています。
 現在田村氏は、復興庁の上席政策調査官として、東日本大震災後の被災地の復興に力を注いでおられます。田村氏が提唱するのは、「被災した人が自らの力でまちを取り戻す」こと。それを後押しする存在として、企業や政府などの多様な担い手の役割が解説されました。
 阪神・淡路大震災での経験から、田村氏は、詳細なデータを収集し、科学的根拠に基づいた支援の重要性を訴えます。講演では、実際の東日本大震災後の実態調査の結果が示され、阪神・淡路大震災の時とのちがいが浮き彫りにされました。その一つが、人口動態の変化です。とりわけ若者の減少が顕著で、18歳人口が1995年と比べて3分の2にまで減少。その結果、被災地で活動するボランティア数も著しく減ったといいます。
 一方で、阪神・淡路大震災の教訓が生かされた点として、震災後、長期間にわたって継続的に活動するボランティア数が増えたことが評価されました。
 復興までの道のりについても見通しが語られました。そこで強調されたのは、復旧と復興の間の「踊り場」期間のサポートの重要性です。この期間の支援が手薄だと、孤独死を招いたり、住宅地の過疎化や商店街の衰退につながり、真の復興は望めないといいます。今後のためにも、この期間の研究や支援が進むことが切望されました。
 復興を成し遂げるためには、「人口変動に対応する包括的な政策」が不可欠だと田村氏は語ります。そのためには女性や高齢者、外国人も含めた多様な人が参画できる社会の構築を急ぐ必要があると解説されました。
 最後に、被災地での復興への取り組みは、いまだ停滞を続ける日本が再び立ち上がる道を見いだす上でも、試金石になり得ると期待が寄せられました。

■討論1

 基調講演に続いて行われた討論では、東日本大震災からの復興の道程で発生しているさまざまな課題が指摘されました。とりわけ、「調査・分析によって問題の本質を解明し、教訓を次に生かすプロセスが必要」との意見に多くの賛同が寄せられました。
 また復興の取り組みを地域行政だけで担うことの限界も指摘され、企業やNPO法人の活動に加えて、大学の果たすべき役割についても議論されました。
 さらには「ITに何ができるか」という話題に関しても議論が白熱。ソーシャルメディアの活用の可能性と課題点について数々の意見が交わされました。

■自由討論

 夕食後、再開された自由討論では、被災地の復興を達成するためのさまざまなアイデアや意見が出されました。
 まず現在の被災地では、都市計画や資源計画の策定を推し進める上での起爆剤となる「悪役」がいないことが問題視されました。復興にたどり着く「最適解」を導き出すには、地方自治体は力量不足だとの声が聞かれる中、より小さな単位の組織による「自治の取り戻し」が必要だと語られました。
 またそうした行政に代わって復興を推し進めるのをサポートする機能として、ITの可能性が指摘されました。加えて企業やNPO法人などによるソーシャルビジネス型の行政課題の解決法も提示されました。
 一方で指摘されたのは、復興の担い手である人材の不足です。日本では、雇用の流動性が低く、異なる領域の知識や経験を持った人材が少ないために、課題解決が進まないとのこと。あらためて多様な人材が働きやすい社会づくりの必要性が明らかにされました。

■基調講演II

311から未来へ

 翌朝行われた基調講演Ⅱでは、京都造形芸術大学の竹村真一教授に、311(東日本大震災)後の未来に求められる“野蛮でないデザイン”について、数々の事例とともに解説していただきました。
 まず竹村氏が主宰する“Earth Literacy Program”によって制作された「触れる地球」が紹介され、この地球が象徴するように、「地球という大きな枠組みの中に我々を位置づけ、地球のリズムと同期させた社会づくりが必要」と説かれました。東日本大震災を機に、いよいよその必要性が顕在化。ついに本当にサステナブルな地球をめざす時機の訪れを告げる「目覚まし時計が鳴った」と表現されました。
 目覚まし時計の鳴った311後に求められているのは、目先の便利さだけを優先した“as usual”なデザインではなく、時間的、空間的に、よりマクロなスケールで問題を解決し、将来にわたって持続可能なデザインです。それこそが“野蛮でないデザイン”と説明されました。これは、従来のBCP(Business Continuity Plan)を超えた、LCP(Life Continuity Plan)ともいえます。実際にそうしたデザインを創造していく試みが、数々の企業で始まっているとして、いくつかの事例が紹介されました。
 一つには、INAX(現LIXIL)が開発した「無水・無電源トイレ」です。同社は、従来16リットル要した洗浄水を4リットルにまで減らすトイレを開発していますが、「無水・無電源トイレ」は、さらにそれより90%も水の使用量を減らせるといいます。またミサワホームが提唱する自立水源を確保した住宅地、さらには、「自立エネルギー都市構想」も披露されました。これは、津波や洪水を受け流せる高床式の都市で、上空にソーラーパネルも備えるという壮大な構想です。
 その他にも災害のリスクを予見する「ユビキタスミュージアム」、仮設住宅や自立発電、食料確保が可能な廃コンテナを世界各地の港湾にストックし、災害発生時に世界各地に派遣できるアイデアなどが示されました。
 こうした“野蛮でないデザイン”は、「緊急時」が常態化している311以降の地球において、より普遍性を持った地球基準“Base of the Planet”のデザインになっていくだろうと竹村氏は予見します。その中で今後、日本が発信する“Creative Sustainability”デザインは、今後、平常時のLCPとして、また世界中で必要とされる地球基準“Base of the Planet”のデザインとして、大きな役割を果たすことになるだろうと語られました。

■討論2

 講演後の討論では、まず災害が常態化している現代において、リスクマネジメントの重要性が語られ、そのための「合意形成」の難しさについて議論が集中しました。多くの参加者から、合意形成に縛られず、試行錯誤を通して最適解を見いだしていくプロセスが重要だと語られました。また「ディファクトスタンダード(事実上の標準)」をつくるプロセスや世界標準を先につくり、日本に逆輸入するなど、「合意形成」の困難さを打破する方法がいくつも提示されました。
 加えて「問題の解決策をデザインできる人材の不足」が指摘されたことから、教育についても議論が及びました。学校やコミュニティでは実現できないオルタナティブな学校、コミュニティカレッジやエクステンションカレッジといった多様な教育の仕組みの必要性が話し合われました。

■第12回 アエラスフォーラムII 開催概要
■アエラス講演録No.12 (PDF:約2.3MB)
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